初年次ゼミナール「地域研究の方法と貢献――最近の研究書から――」

【この授業の目標・概要】
 本ゼミは、およそ過去5年間ほどの間に刊行された研究書から歴史学、文化人類学、政治学、地理学等々の結節点にある地域研究という学知の方法を学びます。やや単純化して言うのであれば、①普遍的な理論を援用し事象を説明することよりも、それぞれの地域の実情から理論を捉えなおそうとする、または中程度の説明枠組みを立ち上げようとする、②現地社会に対する深い理解、③現地で使われる(または使われていた)言語の習得、④参与観察や実地調査(フィールドワーク)が往々にして具体的な方法である、が地域研究の共通項として挙げられます。こう言ってしまうと簡単に思えるのですが、現地社会の深い理解や他者の言語の習得には長い時間と多大な努力が必要です。また、他者の社会に入りこんで生活するのは、多くの困難を伴います。21世紀になり、情報の氾濫が顕著です。簡単に情報が手に入るのに、なぜ他者の社会に入りこみ、何を学ぼうとするのでしょうか。なぜ地域研究という知が必要なのでしょうか。他方では、2020年代になり、知識の秩序が大きく揺らぎ、真実とは何かが問われています。また環境破壊の影響がますます深刻になりつつあり、もはや近代社会の問題を先送りにすることが許されません。このような危機に対して、地域研究はどのような貢献ができるのでしょうか。これらの問いを考えていきます。
 このような大きな問いを、およそ過去5年程に上梓された地域研究の研究書を読み解くことにより考えていきます。私の専門が東南アジアということもあり、東南アジア関係が多いですが、他地域のものも準備しました。文献のリストは、上を参照してください。

【学術分野】歴史学
【授業形態】文献批評型

【授業計画】
第3週 4月27日 文献紹介と割り当て、レジュメの切り方
第4週 5月11日 文献発表(4名)文献①、文献②
第5週 5月18日 文献発表(4名)文献③、文献④
第6週 5月25日 文献発表(4名)文献⑤、文献⑥
第7週 6月1日 文献発表(5名)文献⑦、文献⑧
第8週 6月8日 文献発表(5名)文献⑨、文献⑩
第9週 6月15日 研究計画発表、論文の書き方 
6月22日 (休講) 
第10週 6月29日 論文に向けた発表(5人)
第11週 7月6日 論文に向けた発表(5人)
第12週 7月13日 論文に向けた発表(6人)
第13週 7月19日(補講日) 論文に向けた発表(6人)
論文提出 8月

〇数字は駒場生が借りられる東大図書館の保有冊数。
文献① 吉田舞『先住民の労働社会学: フィリピン市場社会の底辺を生きる』風響社, 2018. ②
文献② 徐涛『台頭する中国における東アジア共同体論の展開 : 戦略・理論・思想』 花書院, 2018. ①
文献③ 山根健至『フィリピンの国軍と政治 : 民主化後の文民優位と政治介入』法律文化社, 2014 ②
文献④ 坂口可奈『シンガポールの奇跡: 発展の秘訣と新たな課題』早稲田大学出版部, 2017. ①
文献⑤ 神原ゆうこ『デモクラシーという作法 : スロヴァキア村落における体制転換後の民族誌』九州大学出版会, 2015. ①
文献⑥ 外山文子『タイ民主化と憲法改革 : 立憲主義は民主主義を救ったか』京都大学学術出版会, 2020. ③
文献⑦ 友松夕香『サバンナのジェンダー : 西アフリカ農村経済の民族誌』明石書店, 2019. ①
文献⑧ 田原史起『草の根の中国 : 村落ガバナンスと資源循環』東京大学出版会, 2019. ⑥
文献⑨ 福浦厚子『都市の寺廟 : シンガポールにおける神聖空間の人類学』春風社, 2018. ①
文献⑩ 熊倉和歌子『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』東京大学出版会, 2019. ③

【授業の方法】
・受講者は2回の発表を行います。一回目は文献についてで、二回目は小論文に向けてです。一回目の文献発表のために、二人一組になり研究書を一冊読む必要があります。
・文献発表の回(第4週~第8週)には、発表される文献2点(A、B)について、コメントシートをITC-LMSに提出してもらいます。要約、気になる点、問いを書いてください。大体一回当たりの読書量は20頁程度を予定しています。
・論文に向けた発表の翌週までには、論文のアウトラインを提出してもらいます。

【文献リスト】〇数字は駒場生が借りられる東大図書館の保有冊数。
・伊野憲治『ミャンマー民主化運動 : 学生たちの苦悩、アウンサンスーチーの理想、民のこころ』めこん, 2018. ②
・長田紀之『胎動する国境 : 英領ビルマの移民問題と都市統治』山川出版社, 2016. ②
・箕曲在弘『フェアトレードの人類学 : ラオス南部ボーラヴェーン高原におけるコーヒー栽培農村の生活と協同組合』めこん, 2014. ②
・熊倉和歌子『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』東京大学出版会, 2019. ③
・神原ゆうこ『デモクラシーという作法 : スロヴァキア村落における体制転換後の民族誌』九州大学出版会, 2015. ①
・斎藤照子『18-19世紀ビルマ借金証文の研究 : 東南アジアの一つの近世』京都大学学術出版会, 2019. ②
・坂口可奈『シンガポールの奇跡: 発展の秘訣と新たな課題』早稲田大学出版部, 2017. ①
・下田健太郎『水俣の記憶を紡ぐ : 響き合うモノと語りの歴史人類学』慶應義塾大学出版会, 2017. ①
・徐涛『台頭する中国における東アジア共同体論の展開 : 戦略・理論・思想』 花書院, 2018. ①
・田原史起『草の根の中国 : 村落ガバナンスと資源循環』東京大学出版会, 2019. ⑥
・津村文彦『東北タイにおける精霊と呪術師の人類学』めこん, 2015. ①
・友松夕香『サバンナのジェンダー : 西アフリカ農村経済の民族誌』明石書店, 2019. ①
・外山文子『タイ民主化と憲法改革 : 立憲主義は民主主義を救ったか』京都大学学術出版会, 2020. ③
・長津一史『国境を生きる : マレーシア・サバ州、海サマの動態的民族誌』木犀社, 2019. ②
・福浦厚子『都市の寺廟 : シンガポールにおける神聖空間の人類学』春風社, 2018. ①
・森明子『ケアが生まれる場 : 他者とともに生きる社会のために』ナカニシヤ出版, 2019. ②
・山根健至『フィリピンの国軍と政治 : 民主化後の文民優位と政治介入』法律文化社, 2014 ②
・吉田舞『先住民の労働社会学: フィリピン市場社会の底辺を生きる』風響社, 2018. ②